ご
医者の彼女が、僕に名前を文字にして教えてくれた。
聞いただけでは、意味がわからないだろう。
僕は別に何かしらの障害を持っている訳では無いし、
学校でも特進である事を根拠に、一応人並みにはできるつもりだ。
しかし、何故か不思議な事に、
音として聞く言葉が、特に人の名前等は、
殆ど覚えられない。
小さな頃から、情報は全て本で得たと言っても過言ではない様に思う。
ここでは記せないが、個人的には、
彼女の名は、綺麗な字面だと思った。
やっと彼女の名を知れた事を記録する為、
これからは彼女をYとでも呼ぼう。
Yと今日話した事を要約すると、
僕の全てを造っている出来事を残るべきだと。
自分の中でも、その存在は、何をするにもついてくる。
あまりに詳細を書いて、特定されるのも避けたいが、
でも、これを少しでも見た人には、どうか証人になって欲しい。
僕の中には、自分よりも大切な人がいる。
守る為なら、それ以外は何を壊しても、
僕が悪になっても構わないと思っている人がいる。
家族を亡くし、いくらもがいても愛されなかったその人が、ちゃんといた事を、
少しでいいから、どこかで忘れないで欲しい。
人に語れるような人間ではないから、ここまでにする。