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保健室で横たわった僕は、折角来てくれたクラスメートとまともに話す気になれず、
ぼんやりと空間を見ていた。
気がついたら彼は消えていて、
どうでもいいかと思い目を瞑った所で、
またカーテンが開かれた。
足音が担任の男教師のそれだった。
寝たふりをしている僕の瞼に、
ゆっくりと大きな手が重ねられた。
怖かった。
手の大きさや、行動の意味自体に、
圧倒的な強さを感じられたから。
今なら、何をされても、
僕は狸寝入りをやめる事が出来ないし、
簡単に壊される事が出来るのだと悟った。
その考えが読まれたかの様に、僕の目を覆っていた教師の手は、
僕の首筋へとつたい、微かに力がこめられた。
何をされているのか理解に時間がかかり、
それから苦しさで、軽く咳き込んだ。
すると手が離れて、カーテンが閉まる音がして、
目を開くのが怖かった僕は、また眠った。
書いていたら、悲しくなってきた。
何もかも、意味がわからない。
その教師は、今も担任だ。
無口な僕に、前と変わりなく接してくれる。